9月入学は留学に有利?

新型コロナウィルス感染症 (COVID-19) の影響により、2020年3月から5月まで全国の9割以上の小学校、中学校、高等学校など(以下「学校」とする)が一律臨時休校になりました。 6月から一斉に開始されましたが、再開の時期に日本各地でばらつきがあり、安全面を考慮してソーシャルディスタンスが保てる環境により、ところどころ規制があり、まだ元通りの授業や部活動とは言えない状況が続いています。休校中のオンライン授業や夏休みを短くするなど対策は取られますが、正直なところ、今年分の学力低下は避けられない問題であり、また、部活動に捧げていた学生にとっては練習も試合もできないことで貴重な学校生活や将来を棒に振ってしまった子供たちもいるかもしれません。気の毒ではありますが、今年の事態は誰を責めることもできません。では、来年以降、コロナが学力や学校生活に影響しないよう考えなければなりません。

文部科学省は長い目で解消する方針を発表しましたが9月入学の合意にはいたりませんでした。

9月入学については、安倍晋三首相が2020年4月29日に「前広に検討」と話題に出し、萩生田光一文部科学相も「大きな選択肢の一つ」としています。政府は6月上旬ごろに何かしら入学時期に関する方針を示す模様です。

東京都知事はすでに賛同し、学生の反応としても賛成派は4割程度あり、賛成派の学生の中には署名運動をしていたりします。4月入学を9月に延長することで、2020年3月以降この学年で学び切れなかったことを、2021年4月~8月で補うことが可能になります。

また、本題である留学にも実はかなり良い影響を与えます。世界の入学スケジュールに合わせることになるので、留学と入学時期が一致するようになります。

海外の入学時期

諸外国と比べてみても、4月入学は実は主要7カ国(G7)では日本だけであり、20カ国・地域(G20)でも日本とインドのみです。世界との入学時期のズレが留学の壁になり、日本の大学のグローバル化が遅れる一因と考えられています。

(例)

シンガポール:1月
オーストラリア/ニュージーランド:1月末~2月初め
韓国:3月
パナマ:4月
タイ:5月
フィリピン:6月
アメリカ/カナダ/イギリス/フランス/ベルギー/トルコ/モンゴル/ロシア/中国:9月
ナイジェリア/カンボジア:10月

オーストラリアやニュージーランドといった南半球の地域は地理的な影響があるため、冬ではありますが、留学に人気の国は9月入学を占めています。

9月入学が多い背景として、欧米ではほとんどの農業の繁忙期が真夏の7~8月ごろです。前年の秋に種をまいた「冬小麦」の収穫時期が夏にやってくるほか、家畜農家では夏に干し草を作る時期になります。草が生えやすい短い夏に、冬に備えて干し草を作っておきます。

夏に子供達に農作業を手伝わせたい農家を考慮して、「農作業が落ち着く9月ごろに学校をスタートすれば、たくさんの子供達が学校に行くことができるようになる」という結論いたったのが、現代までその伝統が続いているといわれています。

歴史上、環境と子供が通いやすい時期に合わせて調整されたことがわかります。

秋入学のメリット・デメリット

2011年東京大学が、大学のグローバル化・競争力の向上を目指し9月入学導入を検討しましたが、「医師国家試験や司法試験などの国際試験が春に卒業することを前提として日程が組まれている」「就職活動解禁は春の入学を前提に組まれていて、秋入学の学生には不利になる」などのデメリットな理由により、秋入学制度の実施は見送られることになり、その代わりに2015年以降4学期制が導入されたという事例があります。

また、秋に卒業すると春の入社までに半年間時間が空いてしまう懸念があります。ですが、社会人になる前にこの半年間を利用して短期留学や海外旅行に出かけたり、資格を取ったり、趣味に打ち込んでみたり、ボランティア活動やインターンシップに参加するなどやりたいことをやる時間が作れると肯定的に考えます。それに伴い、社会もボランティアやインターンシップ、短期派遣やアルバイトなど、その期間中の人たちを受け入れる体制を整え、需要にこたえる供給をしていく課題はあります。

ヨーロッパ諸国では学生のギャップイヤーが根付いています。 高校卒業から大学進学までの隙間期間や、大学在籍中に休学をして1年程度アルバイトをしながら旅をすることは選択肢として一般的です。

人生経験が積める上、可能性の幅を広げることはキャリア形成につながり、新しい経験を通して視野が広がる期待があります。隙間時間を取ることは「休む」と捉えがちですが、それで堕落するか、挑戦する時間にするか過ごし方はその人次第であり、その後に活かせる選択であるに違いないでしょう。

メリットを挙げてみます。

  • 欧米と学期を合わせることができ、海外からの留学生を迎え入れやすく、日本から海外への留学もしやすくなる。
  • 空いた期間には短期留学やインターンシップができる。
  • 世界の優秀な人材を日本企業が受け入れやすい体制が整う。
  • 企業の新卒採用の時期も一律ではなく、多様化していくきっかけになる。
  • 冬の寒い時期の入試を避けられる。雪による交通機関の遅延や遅刻を避けられる。受験が天候に左右されなくなる。
  • 風邪やインフルエンザ、そしてコロナの影響を受けにくくする。

まとめ

9月入学は留学先に人気の国々を中心に世界的にスタンダードです。4月入学という伝統と習慣を変えることは容易ではないかもしれませんが、デメリット以上に変えるメリットがあるのは事実です。

実は大正時代までは日本も秋入学でした。しかし、企業の会計年度に合わせて4月入学に移行した歴史があります。今までにも秋入学の検討はされてきましたが実現してきませんでした。慎重になるべきではありますが、コロナというイレギュラーな事態に迅速に対応できる政府であってほしい限りです。

コロナの打開策として、入学式が桜ではなくイチョウの木の下で行われる日が来るかもしれません。

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